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vol.139.神の加護を願う行事

公開日 2022年08月

R4.8月号コラム

~山・海・川の神~

 参議院選挙があり、「事務所開き」の用語が新聞紙面で見られた。事務所にもよるが、必勝の神事が行われるのだろうか。“開き”で馴染みなのは、山開きや海開きである。事務所開きは聞くが、対の、事務所閉?なんて言葉は聞かない。マイク納と言うが、面白い用語である。

 徳島県内でも初夏になると、剣山の山開きがニュースになる。冬は危険で特別な人しか登らない。ある意味では神の宿る山に修験者以外が登れる季節の幕開けを告げる行事であり、神事である。一般に山を開放する、いわば山岳信仰の一側面を見ることができる。一方、日本一低い山の弁天山も高さに関連して6月1日が山開きだ。山の遭難事故のない山であるのが自慢である。

 7月になると海開き、あるいは浜開きと言われる海水浴の開始のイベントがある。例年ならJRは田井ノ浜に臨時の海水浴場のための駅を作る。太平洋へ開けた海水浴場は泳ぐだけではなく、広々とした太平洋の眺めも格別である。もちろん、海での事故のないことを願って神事が行われることも想像に難くない。海は思わぬことが起る、日本人の信仰では海には神はいる。趣は変わるが、学校や保育所ではプール開きが行なわれるところもある。

 述べてきたこととかなり異なった使われ方の一つが鏡開きであり、正月に神に祀った餅を割って食べることで、割るが忌み言葉であるので、開きを使う。年始に組合などが闘争を始めるにあたって懇親会を開くのが旗開きである。私も職業人の時は組合員だったが、旗開きなど知識だけで参加の経験はない。

 これで、今回の話は終わりであるが、終わりも忌み言葉である時と場所がある。だから、祝宴の時は,“お開き”にします、と言うが、開きは、はじめの意味のように思うのだが、当然の言葉と受け取られている。職業にかかわる忌み言葉を紹介して終える。土木屋さんが川に橋を架けるのだが、○○橋の橋を“ばし”と言わずに“はし”と言うのである。橋をかけて水が濁れば技術屋さんの恥であるのだ。お粗末でした。これでお開きにします。
(写真は月見ヶ丘)

徳島広域消費者協会 顧問 三原茂雄