公開日 2022年11月

~雲浄くして妖星落ち 秋高くし塞馬肥ゆ~
「天高く馬肥ゆる秋」と言われるように秋は気持ちの良い響きがある、だが、現実は「物価上がり懐痩せる秋」である。先日の新聞によると値上げの品目は数千品目である。財布もやせ衰え生活防衛に四苦八苦の秋である。買い溜めをする余裕もないが無駄な抵抗と思いつつビールと言えば聞こえはよいが発泡酒を一箱買って得した気分だ。
後期高齢者になると医者通いが仕事。私は、治療費も一割負担から二割負担に10月からなるので駆け込みで月末にお医者を回り受診し、出来るだけ長期の薬の処方をお願いした。とは言いながら、これだけは申し出通りに処方をしてくれるわけではない。それでもささやかではあるが生活防衛になった、と気休めではあるが、やるだけやった感じである。
そういえば、冒頭の諺の語源を知っても仕方がないが、「天高く馬肥ゆる秋」との諺の本来は爽やかとは程遠い恐い話なのである。杜審言(としんげん)が前漢時代のことを書いた詩の一節「雲浄くして妖星落ち 秋高くし塞馬肥ゆ」である。肥えて強くなった馬に乗ってやってくる匈奴を恐れたものである。
コロナも落ち着きを見せ各種の消費喚起の政策が行われ始めた。経済の活性化には好ましいことではあるが、現実は目の前の1円や2円の得になるポイント日を探して買い物に走る庶民には、旅行割は高嶺の花である。出かけない、交際しない、必要最低限のものしか買わない。細やかな生活防衛の日々である。
匈奴が攻めてくるわけではないが、かなり広い範囲の値上げ、赤い羽根共同募金、歳末助け合い募金など、更に、地域の祭りなどの寄付金の負担も小さい金ではない。秋の風と共に来るのは二百十日よりも怖いのである。
蛇足、どうでもよい話だが、自治会の会長などで得た知識を面白いのでちょっと加える。「寄付の『自発的に金品を贈ること』に対して、募金は『受動的にお金を出すこと』」であり、微妙にニュアンスは違うのである。
(写真は本文とは無関係)
徳島広域消費者協会 顧問 三原茂雄