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vol.153.労働の対価を評価した表現

公開日 2023年10月

R5.10月号コラム

~「送料無料」は適語かな~

 昨今、話題になっているものの一つが運転手の労働時間である。このままでは宅配の品物が届かなくなるという事だ。不在の家庭が多く再配達の荷物が増加して、多くの時間を取られている現状である。置き配のように手は打っているようだが、労働時間の短縮にはまだまだ程遠い。
 
 そのような中で、声はまだ小さいが問題点の指摘がある。それは通信販売で時折聞く「今なら、送料無料」である。人手不足が言われる中で、送料無料とは働いている労働者の労働の対価が無料であると叫んでいるに等しい。一日中汗水たらして働いて、それは無料なのか、との問いかけである。

 この表現は、詳しく言えば、送料は当社負担というべきもの、あるいは、送料込み、と伝えることが望まれるのではないか。宅配でよく見るあの自動車は、運転手の賃金は無料なのか、でなければ、ボランティアなのか、いずれにしても有料ではない。あっても、ありがとうの謝礼なのか。これが持続可能な通販のシステムなのかと疑問になる。

 どうでもいいじゃないか、という人もいるが、自分がなしている労働が、対価としては無価値に等しく評価されて嬉しいはずがない。ちょっとした言葉の表現で避けられることは避けるのが好ましい。キャッチコピーとしては、「送料込み」では弱く、「送料当社負担」もインパクトがイマイチと思ったにしても、人を傷つける表現であると私は思うのだ。

 通信販売は無くてはならぬ販売となり、それを支えている運転手も無くてはならぬ人である。無人の配達自動車が出てくる可能性はあるにしても、当分は現在のシステムが続く。持続可能な社会の担い手を大切する、働き甲斐を持ってもらう社会を築いていくのも消費者のすべきことと思われる。
(写真のヒマワリは内容とは無関係)


阿波の助っ人・くらしのサポーター 三原茂雄