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vol.160.良寛の句、俵万智の短歌

公開日 2024年05月

~春には桜がよく似合う~

 何といっても春は桜である。とは言いながら昨今桜はいろいろあり、実に長い間桜だよりが聞かれる。桜だよりの幕開けは彼岸桜(漢字で書きたい)である。おそらくは春の彼岸の頃に咲いていたので彼岸桜と呼ばれたのだろう。近頃は彼岸には咲き終えている。その一種が徳島ではいわゆる蜂須賀桜と言われるものだ。少し赤めの桜は徳島ではよく知られるようになった。
 
 一番親しまれている桜は染井吉野(ソメイヨシノ・漢字で書いてみたくなった)である。お花見で見に行くのは染井吉野の花であるとさえ言える。赤味があれども白が勝っている。一斉に咲き始め散り始めるのも一斉であり花の命のはかなさを見せつける。私の子供のころは入学式に満開になり記念写真の定番でもあった。

 近くの事代主神社は30本ほどの桜が咲くが、多くの桜が散った後に花をつけているのはポンポンのようにたくさんの花びらをつける八重桜。すこしの雨にも風にも負けずに長く花びらをつけている。染井吉野の散りざまを見ていると八重桜の散りざまの違いに例年驚くのである。同じ桜でも受ける感じは大きく異なる。

 桜と言えば、良寛と俵万智の歌である。サラリーマンとして長く勤めたが、4月には例年しみじみとこの句や歌を味わった。
      散る桜、残る桜も散る桜    良寛の辞世の句
      さくらさくらさくら咲き初め咲き終わりなにもなかったような公園  俵万智
 勤め人は所詮勤め人。新入社員も定年で退職する人も、結局は散る桜である。そして、どんなに職場で権勢をふるった人でも、その人の退職後は何事もなかったように職場は動いている。

 相撲界を見ていると、一昔前の横綱は負けが込むとすぐ引退宣言をした。昨今は休み、出場を繰り返す。勝負の世界の価値観が変わってきた。染井吉野から八重桜を見ているようだ。
いろいろな意味で春には桜がよく似合うように思える。
(写真は事代主神社の桜)
             


元しらさぎ消費者協会会長 三原茂雄