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vol.177.一呼吸の一は“いち”か“ひと”

公開日 2025年10月

R710

~ひとこきゅう いちこきゅう~

 少し前のことであるが、NHKのアナウンサーが「二人組」のことを「ににんぐみ」と読み始めたように思った。記憶は不確かだが、今までは「ふたりぐみ」と読んでいた。違和感があるという声は回りの人からも数度聞いた。その内に気にならぬようになった。昔の読本の復刻版が手元にあるので見てみると、二人組は「ににんぐみ」であり、「ふたりぐみ」と読む場合は「二人組(ふたりぐみ)」とルビを打つように例示されている。

 ある新聞(雑誌かも)のコラムを読んでいると、「一段落」を「ひとだんらく」と読むことに違和感があるとあった。「いちだんらく」が正しいようである。和語というか大和言葉の「ひー、ふー、みー・・・・」から「いち、に、さん、し、ご、・・・」という中国から伝わった数字の読みに替わってきた。漢字の数字だけでは、どちらの読みが好ましいのかが分からないものは少なくはない。

 面白いのは、一呼吸である。「ひとこきゅう」「いちこきゅう」のどちらでも読める字である。インターネットで調べると、一呼吸を、ひとこきゅう、と読めば、1回呼吸するほどの短い間(ま・あいだ)であり、いちこきゅう、と読めば、1回の呼吸(吸って吐く動作の1サイクル)であると言われる。少し意味することが異なってくる。フリガナが付いていない場合は前後の文脈から判断することになる。

 訓読みというのか、大和言葉の「ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、いつつ、むっつ、ななつ、やっつ、ここのつ、とう」の数え方。他方、中国から伝わった読み方「いち、に、さん、し、ご、ろく、しち、はち、きゅう、じゅう」がある。昨今「いち、に、さん、よん、ご、ろく、なな、はち、きゅう、じゅう」とも読まれる。読み方の違いを私は学ばないままである。(筆者は元数学の教員である)

 カール・ブッセの「山のあなた」の詩・「山のあなたの空遠く 幸い住むと人のいう ああ、われひと尋(と)めゆきて」の「ひと」と「人」は異なる。また、牧水の歌に「空の青海のあをにも」がある。「青」と「あを」には違いがある。このように表記が異なれば、分かりやすいが、漢字・数字を異なって読んで意味が異なる、これは難問である。
(カットの秋桜は本文と無関係)

元しらさぎ消費者協会会長 三原茂雄